2012年3月10日土曜日

最後の卒業式式辞

式辞
 佐波川の水もぬるみ、吹き抜けるやわらかな風が木々の芽を膨らませ、自然界一杯に春の躍動感がみなぎってきました。
 まさに若者の新たな旅立ちにふさわしい本日ここに、第6回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、渡辺純忠・山口市長様を始め、多くのご来賓の皆様方のご臨席を賜り、このような盛大な式典をあげることができましたことを厚くお礼申し上げます。

 ただ今、52名の生徒に卒業証書を授与いたしましたが、ここに生徒が無事卒業できますのは、ひとえに皆様方の温かいご指導、ご支援の賜物と存じ、卒業生とともに心から感謝を申し上げます。

 保護者の皆様方、本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。中学校の3年間、また生まれてからの15年間、一日たりともお子様の健康や生活、学業にと気の休まる日がなかっただけに、本日の卒業のお喜びはひとしおかと存じます。

 さて卒業生のみなさんは本日をもって中学校の課程を全て修了します。小学校の六年間とあわせて九年間の義務教育を修了するわけです。これからは今まで以上に自分の意思や自分の力で自分の道を切り開いていかなければなりません。皆さんの前途がすばらしいものであることを祈っています。

 さて私から皆さんへ、3つのことをお話しします。

■一つ目は「心や思いを行動に現す」ということです。
 1年前の3月11日卒業式の午後2時46分に東日本大震災が起こりました。皆さんは募金ボランティアや学校や家庭で節電・節水をしました。「地球規模で考えて足元で行動する」といわれます。この一年、私たちができることに一生懸命に取り組んできました。子どもも大人も日本中が以前とは違う意識と行動を起こした一年でした。これからも同じ日本人として仲間として、共に連帯して生きていきましょう。
  「心」は誰にも見えません。けれど「心遣い」は見えます。
  「思い」は誰にも見えません。けれど「思いやり」は見えます。
  あたたかい心も、やさしい思いも、行いによってはじめて見えるのです。
  「心や思い」を「行動」に現しましょう。


■二つ目は「人生は一生勉強」ということです。
 皆さんの中学校生活3年間はいかがでしたか?
私は皆さんが徳地中学校に入学した年にここに赴任して、皆さんの卒業とともに定年退職となります。私にとって皆さんは最後の卒業生です。感慨無量です。3年前の皆さんの入学式での私の式辞を覚えていますか。昆虫の複眼写真を見せました。これでした。
★下の写真、これは一体、何の電子顕微鏡写真でしょうか?

★上の写真、実は下の「ハナバエ」という昆虫の複眼の一部拡大写真です。

そして次のように言いました。
「私はこのようなミクロの世界、顕微鏡の世界も大好きですし、望遠鏡で野鳥や天体を見ることやものづくりや創意工夫も大好きですと。」
三年たった皆さんに再度同じ事を言います。
「この写真のように、いろいろなものにおもしろさや価値を見つけだす「複眼的なものの見方」で生活してみてください。そして、皆さんが進学する学校には、中学校より一層専門的に皆さんの疑問に答えてくれるスタッフ、先生がいて、勉強のおもしろさを教えてくれるはずです。「複眼的なものの見方」で、しっかり勉強し、そのおもしろさに気づいてください。
ありがたい時代となり、インターネットで人や情報にアプローチしやすくなりました。上手に使いこなしてください。まだまだ皆さんの「人生の勉強は」は始まったばかりです。

■三つ目は「自己実現」についてです。
 科学雑誌「ニュートン」の初代編集長で、私の尊敬する地球物理学の東大名誉教授だった竹内均先生が著書「人生を最高に生きる私の方法」の中で次のように書いています。
 個人にとって「理想の人生」とは、「好きなことをやって、それで食べることができ、しかもそれが他人のために役立ったと、ほめられるような、そういう人生。」
 その自己実現のためには、まず着手することが大切。「着手」とは「はじめの第一歩」のこと。まずは自分のできることから始めるのが自己実現のポイントです。そして良き師、友人、知人に恵まれることです。そして正直、勤勉、感謝が大切だと私は思います。

 最後に、学校生活の中で学習や部活動の中で、後輩を親切に導いてくれた、みなさんの明るく、優しく、思いやりのある豊かな個性にいっそう磨きをかけて、人生を切り開かれることを期待しています。

  以上で第6回卒業証書授与式の式辞といたします。

         平成24年3月10日
             山口市立徳地中学校長 寺 田  勉